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三度の飯と本が好き

最高の猫本

 自他ともに認める猫派である。
 もうとにかく猫という存在がほんとうに好きで、愛しくてならなくて、姿かたちといい、鳴き声といい、触り心地といい、仕草といい、もうなにもかもが大大大好き。猫そのものにはもちろん、猫をモチーフにしたものにもすぐに反応してしまうし、猫グッズはついつい買ってしまう。幸か不幸か、今はなぜだかやたらと猫グッズが多い。自分でも買うし、家族や友人も、私が猫のものを持っていると「また?」とか言ってくるくせに、プレゼントは絶対に猫系のものをくれる。一度もかぶったことがないのが不思議なくらい。それだけ猫グッズが世の中にはたくさんあるってことなんだろうか…。とにかく、そんなわけで私の周りには猫があふれている。今住んでいる場所では猫は飼えないけど、実家には2匹猫がいる (超かわいい) 。

 猫にすぐ反応してしまう、というのは、本を買うときでも例外じゃない。
 猫好きな作家は結構多いみたいで、猫を扱った物語やエッセイは探せばたくさんある。なので、私にもお気に入りの「猫本」はたくさんある。それについてはまたの機会に書きたい。

 今回紹介するのはこちら。

ジェニィ (新潮文庫)

ジェニィ (新潮文庫)

 

  古本屋でぶらぶらしていたら、この表紙が目に飛び込んできて、迷うことなく即買購入…。だってかわいいんだもん、この表紙の猫。
 どうやら、作者のポール・ギャリコはたいへんな猫好きらしく、『猫語の教科書』という本も書いている。この本は、少し前にTwitterでも話題になっていたような気がする。

猫語の教科書 (ちくま文庫)

猫語の教科書 (ちくま文庫)

 

  さて、『ジェニィ』について。何気なく買ったこの本 (しかも意外と長め) だけど、読みはじめたら止まらなくなって、一気に読み終わってしまった。読み終わったときは、もう終わっちゃったんだな…と、さみしかった。そんな風に思えることは、最近ではあまりない。
 何よりもまず、作者が描き出す猫の姿が、とても生き生きとしていることに驚かされる。この人はほんとうに心の底から猫を愛しているんだな、ということがよくわかる。小さな仕草ひとつでも、猫好きからすると身もだえしてしまうほどのすばらしい描写。あーかわいい。ほんとかわいい。猫かわいい。
 もちろん、ストーリーも素晴らしかった。
 物語は、主人公である少年・ピーターが、ある日突然猫になってしまうところから始まる。ピーターは自分がおかれた状況についていけず、外見は猫でも中身は人間の男の子なわけだから、当然、野良猫としてうまく立ち回ることができず、物語序盤ですでにぼろぼろの満身創痍になってしまう。そんなとき彼が出会うのが、本のタイトルにもなっている、雌猫の「ジェニィ」。ジェニィはピーターに興味を持ち、彼に「猫らしく生きるにはどうすればいいのか」をみっちり叩き込むことにする。ピーターも彼女の指導のおかげで、だんだんと「猫らしく」ふるまえるようになっていく。ひょんなことからはじまった共同生活の中で、2人 (2匹でなく2人と言いたくなってしまう) の間には次第に愛情が芽生えていく……
 ざっとあらすじを書くと、こんな感じ。少年の冒険物語の王道という印象かな。この本の中には、愛、友情、出会いと別れ、何かを選び何かを捨てるということ、そして冒険や戦いなどなど――物語をおもしろくする要素、そして人生に深みを与えるような要素がぎゅっと詰まっている。だから、猫好きにとっての必読書であるのは間違いないけど、そうでない人が読んでももちろん面白いと思う。猫嫌いでないのなら、読む価値はあるはず。
 私が特に気に入っている場面は、2人が船旅をするところ。2人が乗った (不法侵入した) 船に乗る、個性的な船員たち、そして彼らのあたたかさ!思い出すだけで心がぽかぽかしてくる。あとは序盤の、ジェニィによる「猫らしく生きるにはどうすればいいのか」講座も好きだな。でも結局は、最初から最後まで猫の、そしてジェニィの魅力が満載だった!という結論に行きつく。
 ラストは意外だったし切ないけど、いい終わり方だった。