よむねるたべる

三度の飯と本が好き

生き方は自由だ

 題名から、いわゆる食エッセイかと思い込んで読みはじめた。けど、そうではなかった。『パリでメシを食う。』の中には、パリで日々「メシを食う」――つまり、パリで生活する日本人が10人登場する。自身もパリで「メシを食った」経験のある著者が、職業も年齢もさまざまな人にインタビューをし、それを一冊の本にまとめたのがこの本なのだ。

 10人それぞれの情熱 (それは静かだったり激しかったりする) 、素直さ、ひたむきさ、そして自由奔放さがとても眩しくて、読みすすめるごとに心と体がほかほかしてくる。だからこそ最後に、「人は、どう生きることもできる。」という著者のメッセージが心に響く。
 成功するか失敗するかはともかく、自分の人生は自分のものであり、その生き方に正解なんてない。自分の声に従い、自分に嘘をつかずに生きる人の姿はきれいだ。

 「自由に生きる!」言うのは簡単、だけど実際そういう風に生きていくのは難しい、という人もいるだろう。でも難しさの根っこの部分にあるのは、制度や環境、常識というような、外側の声だ。自分の声を聞いて生きることそのものは、きっととても簡単でとてもシンプルなこと。必要なのは、目標のために身一つで生きていく覚悟があるか。どんなときも真摯でいられるか。それだけだと思う。

 勘違いで手に取った本だけど、読んでよかった。それにしても、パリという街の多様さ・自由奔放さには驚かされる。もちろんそれと隣り合わせの冷たさや怖さもあるんだろうけど、素敵な街だ。一度は行ってみたい。

パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)

パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)