よむねるたべる

三度の飯と本が好き

ゆらゆら夢見心地

 昨日、1時になるまで一睡もできなかったのでずっと本を読んでいた。積んであったものをいろいろと読んだけど、特に印象的だったのが室生犀星「蜜のあわれ」。二階堂ふみと大杉漣主演の映画版が気になっていたので、とりあえずは原作から手に取った。

 物語はほとんどが会話形式で進んでいく。作者自身の投影ともいわれる老作家と、人間の姿にも変身できる金魚の「赤子」が主な登場人物。たまに他の人物も登場するけれど、この2人 (1人と1匹) だけで世界がほとんど完結している。読みはじめたときは退屈しそうなハナシだ、と思っていたのに、不思議とするする最後まで読みすすめられた。いい意味で、読んだ後になんにも残らない感じ。
 ぼんやりした頭で読んでいると、金魚の尾のひらひら優雅に動く感じとか、人間版赤子が塗っている口紅の色とか、全編通して鮮やかな赤のイメージが漂ってくるようである。終わってみたらぜんぶがたわいない夢だったような、美しく空虚な物語だった。大体からして作家の空想なのか、はたまた――というような、あいまいな設定なので。しかし、これをどうやって映画化したんだか気になるな。

蜜のあわれ

蜜のあわれ