よむねるたべる

三度の飯と本が好き

ゆらゆら夢見心地

 昨日、1時になるまで一睡もできなかったのでずっと本を読んでいた。積んであったものをいろいろと読んだけど、特に印象的だったのが室生犀星「蜜のあわれ」。二階堂ふみと大杉漣主演の映画版が気になっていたので、とりあえずは原作から手に取った。

 物語はほとんどが会話形式で進んでいく。作者自身の投影ともいわれる老作家と、人間の姿にも変身できる金魚の「赤子」が主な登場人物。たまに他の人物も登場するけれど、この2人 (1人と1匹) だけで世界がほとんど完結している。読みはじめたときは退屈しそうなハナシだ、と思っていたのに、不思議とするする最後まで読みすすめられた。いい意味で、読んだ後になんにも残らない感じ。
 ぼんやりした頭で読んでいると、金魚の尾のひらひら優雅に動く感じとか、人間版赤子が塗っている口紅の色とか、全編通して鮮やかな赤のイメージが漂ってくるようである。終わってみたらぜんぶがたわいない夢だったような、美しく空虚な物語だった。大体からして作家の空想なのか、はたまた――というような、あいまいな設定なので。しかし、これをどうやって映画化したんだか気になるな。

蜜のあわれ

蜜のあわれ

 

 

生き方は自由だ

 題名から、いわゆる食エッセイかと思い込んで読みはじめた。けど、そうではなかった。『パリでメシを食う。』の中には、パリで日々「メシを食う」――つまり、パリで生活する日本人が10人登場する。自身もパリで「メシを食った」経験のある著者が、職業も年齢もさまざまな人にインタビューをし、それを一冊の本にまとめたのがこの本なのだ。

 10人それぞれの情熱 (それは静かだったり激しかったりする) 、素直さ、ひたむきさ、そして自由奔放さがとても眩しくて、読みすすめるごとに心と体がほかほかしてくる。だからこそ最後に、「人は、どう生きることもできる。」という著者のメッセージが心に響く。
 成功するか失敗するかはともかく、自分の人生は自分のものであり、その生き方に正解なんてない。自分の声に従い、自分に嘘をつかずに生きる人の姿はきれいだ。

 「自由に生きる!」言うのは簡単、だけど実際そういう風に生きていくのは難しい、という人もいるだろう。でも難しさの根っこの部分にあるのは、制度や環境、常識というような、外側の声だ。自分の声を聞いて生きることそのものは、きっととても簡単でとてもシンプルなこと。必要なのは、目標のために身一つで生きていく覚悟があるか。どんなときも真摯でいられるか。それだけだと思う。

 勘違いで手に取った本だけど、読んでよかった。それにしても、パリという街の多様さ・自由奔放さには驚かされる。もちろんそれと隣り合わせの冷たさや怖さもあるんだろうけど、素敵な街だ。一度は行ってみたい。

パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)

パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)

 

 

止まらない食への好奇心 inドイツ

 ずっとずっと前から、「ドイツに行ったら絶対に食べたい!」と思っていたものがあった。原宏一『ヴルスト!ヴルスト!ヴルスト!』の中に登場する食べもの…メットヴルスト (Mettwurst)である。

ヴルスト! ヴルスト! ヴルスト!

ヴルスト! ヴルスト! ヴルスト!

 

  物語は、高卒認定試験に挑む青年が、ひょんなことから、同じアパートに住むオヤジに巻き込まれ、ヴルスト作りに関わっていくという内容 (こうして要約するとわけわかんないな) 。青年とオヤジが、本場のヴルストを食べるためドイツに渡った場面で、このメットヴルストが登場する。ドイツ人のおばちゃんに勧められ、半信半疑で食べたのに、二人はそのあまりの美味しさにハマってしまう――その描写が印象的すぎた。私は「ドイツに行ったら絶対に食べるんだ」という決意を固めた。
 作中に登場する色々なヴルストに興味を惹かれすぎて、あまりストーリーの内容は覚えていない。これだから食いしん坊は!

 時は流れ…私は今ドイツにいるので、念願かなってメットヴルストを食べられるわけだ。というわけで早速買った。
 ちなみにメットヴルストというのは、「生で食べられるように処理された豚挽き肉」のこと。生の豚肉、ということで敬遠する人も多いようだ。それでもハマる人はとことんハマってしまう、そんな食材なのである。らしい。

 ドイツでは、メットヴルストはそのへんのスーパーにも売っている。私はREWEで購入。真空パックに入っていて、お手軽に買えるのが良い!もちろん、開封後は新鮮なうちにさっさと食べてしまうのが吉。賞味期限も短め。いくら特別な処理をしているとはいえ、なんといっても生の豚肉なので、鮮度と品質にはくれぐれもお気をつけて。お腹壊さないように!

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 食べ方は簡単。カリッと焼いたパンの上にメットヴルストを塗り、あったら黒胡椒をかけて、そのまま食べる。パンは、朝一にベーカリーで焼き立てのを買ってくるのが最高なのだという。残念ながら寝坊したので、私は家にあった全粒粉の食パンを使った。しかも、うっかりしていて黒胡椒を買い忘れた。あーあ!
 でもこれ、ほんとうに心の底からむちゃくちゃおいしかった。食感的には、肉版のネギトロ。肉の甘みと、色々加えられている香辛料のハーモニー…パンの熱でちょっと溶けかかった肉の脂が、もうほんとたまらないんですわ。
 今回は無理だったけど、焼き立てのパンで食べたらもっともっとおいしいだろうなあ!バゲットとか、ライ麦パンとか、ね。あとは、炊き立てのごはんに乗っけて、ネギトロ丼みたいにしたら…ああ想像するだけでお腹が空いてくる。

 それにしても、この調子でいくと間違いなく帰国までに太ると思う…。ドイツに来る前、友人や知り合いが「ドイツはビールとヴルスト以外に美味しいものないから、太らないと思うよ!」と言っていたので完全に油断していたのだけど。
 いろいろあるブロートやブロートヒェン、プレッツェルやベルリーナ―やシュネーバル、大きいけど甘すぎないクーヘンやトルテ、シュニッツェル、ジャンク系でいけばカリーヴルストやケバブ、あとはもちろんビールとヴルスト。あと、そのへんのスーパーに売ってるチョコレートのレベルが高い。むちゃくちゃたくさんおいしいものあるじゃん!
 誰だよ私に嘘教えた奴。