よむねるたべる

三度の飯と本が好き

「わたしには多すぎるから半分食べてくれる?」

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 こないだ北海道物産展でひとりラーメンを食べてたら、隣に座っていた同じくおひとりの女性に、お願いされました。「食べたいんだけど、きっと残しちゃうと思うから…」いやもちろんよろこんで。友だちが食べきれなかったぶんを食べるのはいつものことだけど、これはさすがに人生初!見知らぬ人が食べきれないぶんを譲ってくれるイベント発生。たまたま隣だったわたしが相当飢えているようにみえたのか、がっついていたのか、物足りなそうにみえたのか…ま、とってもおいしそうに食べていた、ということにしておきましょう。

 というわけでおおよそ1.5人前平らげた、麺処まるはRISEの貝出汁醤油ラーメン。なんとポルチーニも入っていて、ラーメンとの組み合わせってどうなんだろうと思ったら、意外と合いますね。固めの麺に絡まる、貝のエキスがたっぷり、ポルチーニがふんわり香るスープ…正直、貝だけでも充分なんじゃ?と思わなくもないけど。でも物珍しかったし、おいしかったし、食べてよかった。

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 ちゃっかりデザートも食べたよ。山中牧場のソフトクリーム。ソフトクリーム本体の牛乳感とおいしさはもちろん、練乳キャラメルのソースがたまらんでした。

 そんなこんなでおいしいものがたくさんの北海道物産展、第2弾がもうはじまってるようで。スープカレーは食べたいな。間に合うかな。

「型どおり」と「型にはまらない魅力」と

 

七つの会議 (集英社文庫)

七つの会議 (集英社文庫)

 

  野村萬斎といえば「型」という言葉を思い浮かべるけど、『七つの会議』もそういう映画だった。型どおりのキャラクターたち、型どおりのストーリー。コイツ悪いわ~と思ったやつはガチガチの悪いやつだし、裏切りそうなやつはちゃんと裏切るし、クズ男は最後までクズ男で、ムードメーカーは最後までムードメーカー。多少の想定外はあれど、どんでん返しは皆無、何もかもが「まあそうなるでしょうね」という感じで展開していく。

 だけどこれがまあ~面白いんだ。

 なんとなく先が読めるはずなのに、ついつい息をつめて観てしまう。手に汗にぎる。「スーツを着た平成の侍たちの時代劇」って言ってたのはこういうことなのかと。
 とはいえ、ただ型にはまってるだけじゃない、もちろん。お決まりの展開のようでありながら、ヒーローが悪役を倒してはいおしまい、めでたしめでたし、というお決まりのハッピーエンドになりきらないところに、この物語の魅力がある。誰が悪いか決められてしまえば楽なのにねえ。黒幕が移りかわり、どんどん大きなものへとつながっていくさまは純粋に怖かった。「俺のせいじゃない」という言葉が何度か出てきたけど、それもあながち嘘ではないのかもしれない。

 野村萬斎演じる八角民夫の異質さは、全体の「型」があるからこそ際立っているんだと思う。いやあ八角さん、浮いてた。異物感すごかった。いい意味でのわざとらしさというか、なんというか、あの存在感は野村萬斎だからこそでしょうね。声の出し方、身振り手振り、表情、視線、どれをとっても圧倒的。あの真っ黒のスーツも自前で用意したそうで。
 香川照之の演技についても、さすがとしか言いようがない。物語中で「ある決意」をしたときの北川誠の姿には、もう。鬼じゃないじゃん、人間じゃん。最後の最後に、鎧に守られていた弱さを見せつけられて、ぼろぼろ泣かずにいられるか。ラスト付近で八角と北川のアツいシーンがあるんですが、そこであえて表情がみえないのにもぐっ…ときてしまう。
 表情といえば、いくつかの場面で笑顔が印象的に使われているなあと思った。八角がある場面だけでみせた無邪気な笑顔、北川が八角に向けたあの笑顔。原島があそこで浜本のために作った笑顔も印象的だった。他にもなんかあった気がするけど思い出せない。「ある場面」だの「あの笑顔」だの「あそこ」だのなんのこっちゃと思われるかもしれないが、きっと観ればわかる。

 最所に「型どおり」とは言ったけど、それぞれのキャラクターがそれぞれの「型」におさまりきらない何かを抱えている、ってことがうっすら伝わってきて、だからヒーロー役も悪役もみんな魅力的なんだろうなあ。もちろん、演者たちの演技力や熱量があってこそなんだろうけど。とにかく登場人物全員、濃い。強い。そして推せる。
 さてあなたの推しキャラは誰でしたか。わたしにもたくさん推しがいるんですが、1人だけ選べといわれればオリエンタルラジオの藤森慎吾が演じた新田ですかね…。藤森の演技はじめてみた、とっても良かった。この新田はどうしようもないクズ男なんだけど、どうも人間臭いところに惹かれてしまう。
 あんなクズ男にも妻子がいて、ということは守るべきものがちゃんとあるんだなあと思うと、なんだかいとおしく…はならないか、別に。

あったかい気持ちをありがとう

 大好きな漫画の最終巻を読み終わってしまった。

甘々と稲妻(12) (アフタヌーンコミックス)

甘々と稲妻(12) (アフタヌーンコミックス)

 

 『甘々と稲妻』。妻を亡くした高校教師・犬塚公平と一人娘のつむぎ、そして彼の教え子の飯島小鳥が続けてきた「ごはん会」が、もう見られないなんて寂しすぎる。犬塚親子の2人、そこに小鳥が加わって3人、時には彼らの友人である小鹿しのぶや八木祐介たち…他にもたくさんの人が集まったにぎやかな食卓に、笑顔と涙をたくさんもらってきた。
 「誰かと一緒にごはんを食べるしあわせ」に満ちているこの漫画に出会えて、ほんとうによかったと思う。作者が描くつむぎちゃんの姿は、ただかわいいだけじゃなくて、子どもが子どもなりに悩みだとか、悲しみだとか、もやもやだとかを抱えていることを思い出させてくれる。自分もかつて子どもだったはずなのに、うっかり忘れてしまいそうになる、そういうことを。
 もちろんわがままを言うこともあるけれど、つむぎちゃんはいつだって一生懸命で、お父さん想いで、まっすぐで、いとおしい。そんなつむぎちゃんを見守り、愛情をたっぷり注ぐ周りの大人たちも、みんな同じようにいとおしい。

 毎回発売日を楽しみにして、大事に読みつづけてきた作品なのに、感想がうまく出てこない。どの話にも思い入れがあるし、それぞれ感想があるはずなんだけど!今はただ、あんなに小さかったつむぎちゃんが、まあこんなに大きくなって…というような、親戚のおばさんみたいなことしか言えない。でも、1人ではエプロンの紐をうまく結べなかった子がキッチンに立つようになった、このことに感慨をおぼえずにいられるだろうか。つむぎちゃんがすこやかに育っていく姿を、読者として見守れたことを嬉しく思う。
 犬塚家がこれからもずっとずっとしあわせでありますように。おいしいごはんをみんなで作って食べる時間が、いつまでも続きますように。