年末なので、「2017年の5冊」を選ぶ
ちょっとまだ信じられないのだけど、あと2日で2017年が終わってしまう!早い…あっという間の1年だった。そんな中でも本はいろいろと読んだ。面白かった本、読んでよかった本はもちろんたくさんあるので、その中から特に心に残ったものを、コンパクトに5冊にまとめてみる。ちなみに小説だけになりました。
2017年前半のまとめはこちら。今回は年間のまとめなので、この中とかぶっているものもちらほら。
恩田陸『蜜蜂と遠雷』
今年の読書始はこの本だった。前の記事にも書いたので詳しくはそちらで。きらきらしていて、ちょっと眩しすぎるけれど、とにかく美しい物語。音楽に愛され、音楽を愛する者たちの姿が、あたたかな目線で描かれている。「天才」として突き放すわけでもなく、「変人」と片付けてしまうわけでもなく、登場人物がひとりひとりの人間として魅力的だったのが印象に残っている。
「文字で書かれた音楽の美しさ」を味わえる1冊でもある。
村田沙耶香『タダイマトビラ』
この本についても、前の記事で感想を書いた。村田沙耶香は大好きな作家の一人だから、ほとんどの作品を読んだけど、私はこの『タダイマトビラ』が一番好きだ。好き…っていうとちょっと違うかもしれない。好き…ではない…むしろ読んでいると苦しいけど、読み終わった後には不思議と救われたような気持ちになる。
実は、この作品に対する「好き…ではない…」という感情は、村田沙耶香という作家そのものに対しても同じだ。好き…ではない…んだけど…みたいな、一筋縄ではいかない (ひねくれた?) 愛情。「好きな作家は?」と聞かれたときに名前は挙げないけど、「これから死ぬまで、一人の作家の作品しか読めません」と言われたら間違いなく村田沙耶香を選ぶと思う。
多和田葉子『百年の散歩』
なぜかエッセイだと思い込んでいたけど、読んでみたら小説だった。
ストーリーを、しっかり細かく説明するのは難しい。語り手である「わたし」が「あの人」を待ちながら、ベルリンの街をさまよい歩く。たったこれだけの説明で済んでしまう。ストーリーには、この本の面白さはない。じゃあ、何が面白いのかっていうと、作者の独特の言葉遣い、言葉遊び、連想ゲーム、みたいなもの。語り手の思考はふわふわとさまよい、街歩きの中で、現実と「わたし」の空想が混ざり合い、境界線が曖昧になっていく。現実と夢の間に立っているみたいな、起きているのか眠っているのかわからないみたいな、なんともいえない雰囲気が好き。好きな人はむっちゃ好きな文体だと思う。
ポール・ギャリコ『ジェニィ』
- 作者: ポール・ギャリコ,Paul Gallico,古沢安二郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1979/07/27
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 44回
- この商品を含むブログ (58件) を見る
全世界の猫好き、読んで。以上。
夏川草介『本を守ろうとする猫の話』
ストーリーとか文体とかが好きってわけじゃなく、テーマが自分にとってものすごく重いもので、そこにズシンと。作中で描かれるのはあまりにも綺麗な世界すぎて、眩しいやら恨めしいやら。でも、どんなに現実が厳しくたって、ほんとはこの「綺麗な世界」を理想として、それを自分の根っこにして生きていくのが正解なんだと思う。その結果として、世界がどんな風になろうとも。
今年もたくさん本が読めて、しあわせでした。来年ももっとたくさんの本に出会えますように。
年末年始には、ずっと読みたかった北村薫「円紫さんと私シリーズ」を一気読みすると決めている。楽しい2017年の終わり&2018年の始まりになりそうだ。皆さまも、読書をしたりおいしいものを食べたりゴロゴロしたり……とにかく、楽しい年末年始をお過ごしくださいませ!